独占インタビュー 第43回 ミズノスポーツ事業部 岸本耕作 さん 2010年01月24日 【高校野球情報.com】独占インタビュー第43回はミズノスポーツ事業部マーケティング部ダイヤモンドスポーツ用具課 岸本耕作 さんです。 【インタビュー:氏原英明】 グラブの軽量化と耐久性 聞き手・氏原英明(以下「氏」) 昨今のグラブではどのようなのが人気なのでしょうか? 岸本耕作さん(以下「岸」) 選手のモデル、プロモデルが多いですね。 「氏」 最近は軽量化のグラブも人気があるというのも聞きました? 「岸」 グラブを軽くしてほしいという要望は以前からあったのですが、ネックになるのが耐久性です。グラブを柔らかくするために、革を薄くしたら、どしても、耐久性が弱くなる。ミズノのオーダーに関しては限度があって、ある一定の水準以上は革をすいたらダメというのがあるので、そのなかでやっています。ニーズが増えているのは事実です。 「氏」 耐久性を選ぶのか?軽さを選ぶのか、選択が難しいのですね? 「岸」 極端にいうと、プロに提供しているグラブだったら軽くできるんです。けど、高校生の練習量だったら1ケ月も持たないです。そういう状態のものが、果たして値打ちがあるのか、という話になります。高校生は耐久性のほうですね。 「氏」 昔との傾向の違いはあるんですか? 「岸」 傾向でいうと、昔はグラブの型を自分でつけるというのが主流で、しっかりした革で作ってというのだったんですけど、今は、すぐ使えるというグラブが好まれる方向に動いていますね。一から型を付けていって、使えるようにするのは苦手といいますか、少なくなっていると思います。 「氏」 その流れは果たして正しいのでしょうか? 「岸」 プロでも両方いるんです。自分で型をつけて使う選手と、始めから型がつけてあるのがいいという選手と二通りいる。グラブ本来の特徴として、ある程度しっかりした状態から型をつけるのがベストやとは思うんですけど、高校生はできないという流れがあるので、仕方ないなと思います。ただ、極端に最初から柔らかくするというのは革に負担をかけなくてはいけなくなるので、革をそのままの近い形で使われる方がベストだと思います。 「氏」 やはり、型をつけたものとは差が出てしまうんですね? 「岸」 柔らかくするためには蒸気を利用したり、叩いたりするので、革に負担がかかりやすいんです。すぐに使いたいというニーズは多いし、反響もあって、売れていますが、ミズノの取り組みとして、今はお店の方対象の研修で自分で柔らかくするやり方も教えています。お店の方はグラブを買った人間とやり取りでできますからね。 グラブ作りについて 「氏」 岸本さんは現在で、どれくらいグラブ作りに関わられているのですか? 「岸」 34年目になんですけど、まぁ、ここ(ミズノインダストリー波賀)も、私が入社した時は大量生産をしてまして、1日に500~600個作ってました。 「氏」 グラブ作りでの以前との違いはありますか? 「岸」 グラブの形状も変わってきて、以前は、チリトリみたいな風に使うグラブでした。今は立体的で人間の手のように動かしやすい形状です。だから、そういう面ではグラブは進化してきていますね。もちろん、ポジション別もできましたし、その中でも、また形状も変わってきましたから。 「氏」 ポジション別に難しいグラブはありますか? 「岸」 作り方自体は基本的にポジション別でそう変わらないのですが、パターンを作るのが難しい。たとえばセカンドはダブルプレーの時に、球離れを速くしたいからポケットが浅いとか、ショートはもう少し大きく横に幅広く。サードは早い球を受けられるようにポケットが深めですね。 「氏」 ポジションごとのニーズは変化していますか? 「岸」 グラブのサイズが大きくなったというのがありますね。特にプロは人工芝が多く、打球が速いので、少しサイズが大きくなりました。 「氏」 グラブをお作りになられる中で、特にこだわりっておられることはありますか? 「岸」 工程はおよそ20あります。私がひとりですべてをやる場合は、それぞれの工程の中で、作りながらも、自分の手を何回も入れます。「手当て(てあて)」というんですけど、手当てをやりながら作っていって、最終的な形状にしていく。特にプロのグラブを作る場合は、意識してやっています。そうするのとしないのとで、出来上がりが違う。 「氏」 どう違うのでしょうか? 「岸」 何もしなかったら、温かみがないといいますか・・・表現が難しいんですけど、手当てをやりながらできたグラブは完成した時に顔ができている。叩かなくても、自分の素手でやることによって、手作りの味が出る。グラブはすべて手作りなのですが、味というか、私は心が入ると思いますので、そこにこだわっています。 「氏」 奥が深いんですね。 仕事のやりがい 「氏」 たとえばどんな時に仕事にやりがいを感じますか? 「岸」 キャンプやシーズン中でも現物を持っていくこともあるんですけど、直接、選手と向かい合って、「いいですね」と言われたときは、うれしいです。担当者を介して間接的に伝えるというのは、モノづくりしているものにすると、あまりよくない。選手から直に聞くべきですよね。全選手1対1でというのは無理ですけど、春・秋のキャンプは行くようにしています。シーズン中でも、問題があればどこの球場でも行きます。 「氏」 手作りをされる中では大変な作業は? 「岸」 グラブ作りで難しいのは、「まとめ縫い」の工程です。背面と補給面を縫い合わせるのが難しいです。この工程で、形が決まるので、その技術を習得するのは何年もかかります。 「氏」 グラブ作りのあり方をこうしたいとかはありますか? 「岸」 作る側としてはプレイヤーの要望に100%応えられるものを作りたいと思っています。 そして、その確率を良い方に上げていきたい。それに加えて、ミズノの商品は使われていますけど、人によっては違うものもたくさんのグラブを使われている。いろいろ試される中で『ミズノが欲しい』っていわれるような商品を作りたい。そういうブラウンドになったらいいなぁと。 「氏」 グラブ作りをしていて良かったなぁと思うときは、どんなときですか? 「岸」 月並ですけど、選手がファインプレーしたとき。特にグラブを作らせて頂いている選手がファインプレーをしたりするのをみると良かったなぁと感じますね。特に大事な試合などは特に気になりますね。 「氏」 感動した思い出とかありますか? 「岸」 10月3日のヤクルト―阪神戦で宮本選手が三塁線の打球を取った時ですけど、宮本さんは今年サードにコンバートされて、「このグラブでゴールデングラブ賞を取るから」と言ってくださったことがあったから、そういうのを思い出して…。とても感動しました。 「氏」 グラブ作りで楽しく思える瞬間はどんなときですか? 「岸」 作って行って、出来上がる寸前いうのは、楽しい。自分で描いた通りに出来上がっているという瞬間は楽しいです。 「氏」 だからこそ、大事にしてほしいという思いも強くなるのでは? 「岸」 プロと高校生とではグラブの品質にそんなに差があるわけではないんです。悪い革だから、一般用に回しているとか、そういうわけではありません。だからこそ、手入れをしてほしいですね。手入れと型つけをしっかりすれば、プロが使っているのと、同じよう使えるはずですから。 グラブの扱い方「岸」 新しいグラブを買った人は、自分の手を入れて触るのは大事だと思います。親指や小指の感覚を触ったりというのは、グラブがなじんでいく過程ですごく大事だと思います。買われた方は、すぐに「オイルをどれくらい塗ったらいいのか」とか聞かれるんですけど、そうじゃなくて、新しい時は手で触るのが一番です。つかみやすいものにしていく。自分でやることによって、形状は出てくる。オイルの質問が多いんですけど、オイルは練習で使い出して、終わってからでいいと思います。 「氏」 プロと高校生では違うと思うんですけど、扱いで気をつけてほしいことはありますか? 「岸」 練習後のケアーですね。特にグラブというのは、泥が一番ダメなんです。表面についた泥を放置しておくと、革が死んでしまって寿命が極端に短くなります。ですから、まずやっていただきたいのは試合が終わったら、必ず泥を取る。それだけでも違う。雨降りに使った時も放置せずに、新聞紙でもいいですから、ケアをしてほしい。オイルは毎日塗らなくてもいい。泥だけは絶対に取ってほしいです。 「氏」 道具を大切することで訴えたいことはありますか? 「岸」 グラブに関していうと、自分でプレーする道具ということを念頭に置いてもらって、それを大事にすることがプレーに出てくると思ってほしい。大げさかもしれないですけど、グラブと一体といいますか。そういう道具を大事にすることから野球は始まると思います。高校生でも大事にする選手がいます。道具を投げたり、バットでもまたいだだけでも怒る高校生がいるという話を聞きます。道具を大事にすることが成長過程では大事だと思います。恋人まではいかないですけど、そういう気持ちになって大事にしてほしいですね。 「氏」 ありがとうございました。 【インタビュー:氏原英明】
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